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Inside Hocola Music

〜ホコラの中を覗いてみよう!〜

ここでは、アルバム「ホコラ」をより楽しむための、作者による面白くてためになる?・・かもしれない楽曲解説をしています。
(アルバム「ホコラ」より一部の曲をピックアップ。未掲載の曲も現在一部執筆中!)

  tr1.ピアノの空間と蛙たちの時間 tr.9 遠いゆうべのしあさって  

tr1.ピアノの空間と蛙たちの時間

ここ、Hocola Studioの近所にちょっとした空き地があり、毎年5月くらいになると蛙
の合唱が聞こえてきます。ある日、風呂に入りながらその合唱を何気なく聴いていた
時、蛙たちの何と素晴らしく格好いいグルーブ!そしてリズムなんだっ!と突然、衝
撃的な感銘を受けたのです。
耳を傾けよく聴いてみると、合唱の全体としてはほぼ3連系のリズムであり、ある蛙

「ゲココゲココ・・」と歌い、また別の蛙は
「ゴケケゴケケ・・」、また別のは
「ゴケゴケゴケ・・」と2拍3連で、はたまた別のは
「ゴゴケケゴゴケケゴゴケケ」と4拍3連で歌っているようでした。
そしてそれらが混じり合い、個別のパートは昨今のダンスミュージックのごと
くON/OFFをコントロールし、全体として独特なうねりと訛りのある強力なリズムを紡
ぎ出しているのです。

風呂から上がり、MDウオークマンを片手に夜の夜中に突っ掛けを履いて彼等の合唱を
録音しに赴き、暫くそこで彼等と共に過ごすうちに、更に気付いたことがあります。

その合唱は1回あたり、2〜3分で終了するのです。
そして暫くの間、やはり2〜3分の間、今度は唯一匹として鳴かず、偶に近くの道路を
走る原付バイクのエンジン音などが聞こえる他はシーンと静寂のみが広がる時間があ
るのです。
その静寂の中、(恐らくキューを出すリーダーが居るのでしょう)、一匹の蛙が「ゲ
ココ・・」の最初の一音「ゲ・・」を発した次の瞬間、他の蛙たちが一斉に
「ゲココゲココ・・」
「ゴケケゴケケ・・」
「ゴケゴケゴケ・・」
「ゴゴケケゴゴケケゴゴケケ」
とやり出すのです。
一端始まってしまえば、やはりリズムの頭にアクセントを置くグループやウラで乗る
グループ、2拍3連や4拍3連のグループなど、様々なリズムパートが折り重なりながら、
パートによっては時折何小節かの休みを挟みつつ、ひとつの楽章が進んでいくのでし
た。

彼等の声はサラウンドで広がり、僕はマイクを片手に息をこらして佇んでいながらも、
コンサートホールでオーケストラを聴いているような気分でした。

そして・・・、(恐らくリーダーが再びキューを出すのでしょう。それをきっかけに)
、今度は突然、一斉に鳴くのを止めるのです。我々ミュージシャンのセッションでも
よくあるように、中には大事なキューを見逃し、一匹だけ「コゲ・・?」とハミ出す
者も居るのですが、兎に角、その2〜3分間に及ぶ壮大な1楽章が終わり、再び静寂が
広がります。
彼等は一晩中、それを続けているようでした。

僕は蛙たちの繰り出すグルーブとリズムに、そして楽章ごとの研ぎ澄まされた間(ま)
に、そしてまた、彼等の音楽に対する真摯な姿勢に深く感じ入りました。

さて、そうして録音してきた彼等の合唱をスタジオで聴いているうちに頭の中にイメー
ジが広がり、カシシ(caxixi:アフリカの楽器。竹のような植物で編んだ籠の中に穀
物などが入っていて、それを振ってリズムを出す。シェーカーのようなもの)などの
鳴り物と、ピアノとヴォイスによる自己との即興共演をカタチにしたものがこの曲で
す。

ここでピアノは蛙たちの周りを包む「空気」であり、カシシが蛙たちの合唱を模倣し
ています。ですからこの曲の主旋律はピアノでは決してなく、主役はカシシです。
そういう視点で聴くと、静寂から始まり、やがて第1楽章が始まり、再び静寂の後、
第2楽章があって曲が終わるという、蛙たちの営みの断片をモチーフとしたこの曲の
構成を感じて貰えるのではないでしょうか。
その他のパート、ヴォイスやカタカタいう鳴り物などは、風であったり匂いであった
り・・・。
サウンドによる夏の風景描写と言えるかもしれません。

また、(これはそのうち改めて文章にするつもりですが)生物としてのヒトとカエル
の世界観・コスモロジー(宇宙観)の対比を表現した曲でもあります。

演奏・録音している時もそうだったのですが、作品として完成したこの曲を聴くと、
初夏の風がそよそよと吹き、遠くに山が見える日本の田園風景や、或いはジリジリと
照りつける太陽の下、ジメジメと暑いベトナムの延々と広がる水田地帯の風景が思い
浮かび、子供の頃の記憶のみならず、DNAに蓄積された太古の記憶までもが呼び覚ま
せられるような、懐かしく心地良い気分に、僕は・・なるのですが、皆さまはどうで
しょうか?

作曲・録音:2000年5月30日
文:中村りき哉 2002年4月24日

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tr.9 遠いゆうべのしあさって

ある年の3月、飼っていた猫が家の前で交通事故に遭い、死んでしまいました。
以前にもペットを寿命で失ったことはありましたが、突然の予期せぬ死は、心の準備
が出来ない為により深い悲しみに襲われたのを今でも覚えています。
その猫の名前を「さくら」といって、この曲は元々、さくらに捧げて出来た曲です。

僅か16小節の、和音も基本的な4種類しか出てこない、更には旋律となる音も4音しか
出てこないとてもシンプルな曲ですが、ピアノが淡々と繰り返すこの16小節のモチー
フ自体が、実はさくら自身なのです。
ある日、さくらが家の前の畑をいつものように散歩していると、一匹の猫(w.bass)
と出会い、一緒に遊び始めます。
暫くするとそこへまた別の猫(締太鼓・団扇太鼓)がやってきて、3匹で仲良く遊び
始めます。
そのうちに最初の猫(bassねこ)は「おれはもう帰るよ」と言って居なくなり、残っ
た2匹でまた別の遊びを始めますが、やがて日も暮れたので太鼓ねことも別れ、さく
らは家へ帰ります。
そんな、さくらの何気ない一日・・とも言えますし、或いはもっと長いスパンで見て、
子供のころベースねこと出会い、
大人になってから太鼓ねことも知り合い、
やがてベースねことの別れがあり、
太鼓ねこと二匹で暮らして年老い、
いつか命を全うする・・・
という、さくらの一生を綴った曲、と感じることもできます。

「ホコラ」の中のベースねこと太鼓ねこは自由にピアノねこのさくらと戯れ、寄り添
い、温かく響き合いながら、それぞれの時間を過ごしてゆきます。
それぞれの時間・・・「ゆうべ」も「しあさって」も連続した時空の中の一コマであ
りましょう。

レコーディング・エンジニア:Hebra-Chittaより一言
ピアニストが最後に解決する主和音であるFメジャーのコードを押さえた後、その響
きの中で鍵盤から指をひとつずつ放していく度に新たに広がる倍音、そして最後に残っ
た最低音のFの鍵盤をゆっくりと上げていく瞬間に、ろうそくの灯火が消える一瞬の
ようにそのF音がふわっと膨らんでから消えていくさまは、ぜひ静かな環境で、少し
大きめの音で、耳を澄まして聴いてみてほしいところです。

作曲:1994年3月上旬 東京都・町田にて
録音:2002年2月〜3月
文:中村りき哉 2002年4月24日

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